PC遠隔操作事件の片山祐輔容疑者がようやく逮捕されました。
事件としては、これはこれで一段落ではあるのですが、僕自身、この事件には大変な問題が未解決のまま残ってると感じます。
それは、今回の捜査では、「コンピュータの通信記録から一連の犯行を立証できなかった」ということです。
容疑者逮捕の決め手は河川敷にスマートフォンを埋めている姿が確認されていること、そしてそのスマートフォンから容疑者のDNAが検出されたことであり、あくまでも片山容疑者の行動による物的証拠であるということです。
きっと彼が最後に、「あ、真犯人です…」のメールを送信するための工作を行わなければきっと、今回の事件は無罪判決となっていた可能性が非常に高かったでしょう。
今回、何よりも巧みであったのは、彼が「自分もPCを遠隔操作された」との主張を続けたことでした。
この主張は何よりも検察当局を苦しめたことに違いありません。
なぜならこの場合、検察は「容疑者のPCは遠隔操作をされなかった」ということを立証する必要があるのです。
しかし、「PCを遠隔操作された証拠を見つけるのは簡単なこと」ですが、「PCを遠隔操作されなかったことを証明するのは不可能」ということがハッキリした感があります。
僕も学生時代に法学で刑法を学びましたが、刑事裁判には「疑わしきは被告人の利益に」という原則があるのです。
片山容疑者のPCを遠隔操作された疑いは最後まで残ります。
その場合は、片山容疑者に有利なように判決は動かざるを得ないのです。
今考えると、本当に恐ろしい事件でした。
片山容疑者が蛇足を加えてくれて本当に良かったと思います。
昨今、PCにおけるセキュリティーが重要視され、通信経路も暗号化されることで、通信内容も他人から傍受されるリスクが少なくなりつつある一方、これを逆手にとった犯罪の可能性だって十分考えられると思います。
例えば産業スパイがスマートフォンを用いて企業の重要機密を写真に撮ったとしても、その写真データをデバイスに残さず暗号化通信の上、セキュアなクラウドサービスにアップしていたとしたら、例えその場で犯人を確保したとしても肝心な「証拠」が無いため、犯罪を立証することはできないでしょう。
実際にそんな機能をもつスマートフォンアプリを作るのは難しいことではありません。
ましてやカメラもスマートフォンのものでなく、Google Glassやコンタクトレンズ埋め込み型のカメラであった場合、その撮影の行為さえ、いつ行われているのか分からず、ますます犯罪の立証は難しいことになると思われます。
結局、世の中が便利になり、セキュリティーも強化されるほど、ネット犯罪は巧みさを増して行くものと思われます。