コンピュータとの出会い

京都の文房具店にて

 小学5 年生の秋のことだった。当時、仲の良かった村井君の家に遊びに行った時のこと。

 彼は鍵っ子で家に行くといつも両親がいない。なんだか自分にとっては羨ましい立場だったが、彼からすればきっと寂しかったんじゃないかとも思う。

 そんな二人が出かけたのは近所の文房具屋。結構大きい店でコクヨの看板の店だった。特に何を買うわけでもなく、店頭に並んでいる文房具を見るのは子供の僕らにとってはなかなか楽しい事だった。そんな二人の目の前にスゴイ機械を発見。

 店の人がお客さんにその機械の説明をしてるのだが、これがなんともレジのお化けみたいなヤツにカセットレコーダーと20 センチ四方くらいのグリーンディスプレイが付いている。で、画面の中では訳の分からぬ英語や数字がどんどん上方にスクロールしていた。

 村井君は「マイコンだよ!」と、僕に声をかける。で、二人で大人達のやりとりをしばし見学する。店の人がなんだかカセットテープを回して次の場面で僕らは最高に驚いた。

 なんとテレビゲームが始まったのだ!テレビゲームと言ってもそれは今からすると本当にお粗末なものだが…。グリーンモニターの中で明らかに人の形をしたキャラクターが手に何かを持っている。このゲームは「カトリセンコウ」というもので、天井から降りてくる蚊に刺される前にキャラクターの持っている蚊取り線香の煙を浴びせて退治するというもの。僕らはなんだか興味深々でその場に釘付けになった。しばらくするとお客は帰ってしまい、店員さんもどこかに行ってしまった。

 驚いたのはなんと、この村井少年は大人達のやりとりを覗き見していただけで、このマシンの操作方法を憶えてしまったのだ。僕はマシンをじっと眺めていたが村井君は「F5 を押せばいいだよ」と、キーイン。すると例の「カトリセンンコウ」が実行されるではないか。二人でものの5 分程遊んだだろうか?すると店の中から店員が慌てて飛んできた。で、いきなり電源を切ってしまったのだ。

 再び電源を投入しようとする村井少年。

 すると怖い顔で店員が彼の手を払って「子供が触るんじゃない!」と、怒って言った。怒られてスゴスゴと店を出る二人。店の前に止めていたお互いの自転車にまたがると、村井君は商店街の回り近所に良く聞こえる大声で「こんな店、もう来てやらへんわい!」と、叫んで自転車を漕ぎ出した。彼の予期せぬ行動に驚いた僕はなんだか焦ってペダルを漕いでその店を後にしたのを覚えている。

 でも、マイコンって凄かったなぁ…。

SHARP MZ-80
※写真は SHARP MZ-80 (WikiPediaより引用)

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